睡眠時間三時間の。
だって、自重しない秋山が悪いんだ。LG新刊表紙でせんせがやってしまったのがいけないんだ。
例えば、見ている所が違うのかもしれない。見ている向きが、方向が、視点が何かもが違って、それで、視界が合う事はない。世界は重ならない。
あの少女にとっての前は、自分にとってどこか別の、見えない場所で、自分にとっての前は誰かにとっての背後なのだ。
すぐ近くに、暖かい体温と小さな質量を感じて、それで、ただ一人握り締める。
彼女にとっての前は、自分の背中ではなかった。
世界は重ならない。
「秋山さん」
小さく彼女が名前を呼んだ。小さくて細くて、例えばすぐ近くに感じる体温と質量をそのまま音にしたら、こんな感じなのか、と何となく思った。
「行きましょう、一緒に」
思った通り、と思いたかった。だけど、触れられたその手は、細さはその通りでただひどく冷たい。握り込んでも彼女の足はびくともしなかった。自分が包んでいるはずのその小さな質量がとても重い。
あなたのその弱さも強さも、誰かを救うんです。
君がそう言うなら、君がつく嘘なら、きっと俺は信じて、守らなければいけない。PR